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古代の繊維 ┃三河木綿綿の栽培法綿紡ぎ木綿の売買織機の変遷

【 古 代 の 繊 維 】
人類が衣服を着たのは、10万年前の後期旧石器時代の第4氷河期頃と言われている。その時代は食物のために狩猟をした獣類の毛皮であった。衣料繊維の発見は縄文時代とも言われるが、弥生時代から急激に広まったという。その時代の植物衣料繊維は自生の「・コウゾ」「・カジ」「・シナ」「山桑」「山藤」等の樹木皮や「大麻・タイマ」「・クズ」「イラ草」等の草木皮を剥ぎ細く裂いたものがある。これが当地方の主な植物性繊維であった。
やがて稲作技術に伴い、麻の一種「苧麻・チョマ」「・クワ」「・ハス」等を植生栽培して柔軟な繊維を取り、繋ぎ合わせて細くて長い糸を作り、その糸を経糸緯糸に組み合わせて織ったり編んだりして衣服としていた。
動物繊維の主たる蚕絹糸の採取も、当地方に自生(野性)していたクヌギ・ナラの葉を食べる「天蚕(山繭)」であった。弥生時代前期の農耕・稲作技術の伝来と同時期に、桑の葉単食種である「家養蚕」技術も伝えられ、農耕飼畜経済の発展に伴い男女の仕事分担化が進み、養蚕の技術も発達して女性中心の仕事となり、柔らかく、暖かい高級衣服として全国に広まっていった。

(1)綿花の伝来
江戸時代から昭和中期にかけて衣料繊維の中心であった「綿」は、日本では意外に遅く室町時代後期から本格的な栽培が始まった。暖かく丈夫であり着れば着るほど、洗えば洗うほど肌ざわりがよい「木綿」は徳川幕府の奨励もあり江戸時代から急速に促進されて、庶民の生活に欠かせない衣料となった。
「綿種」の我国最初の伝来は、延暦18年(799年)三河幡豆郡(今の愛知県西尾市)に漂流した崑崙(コンロン)人によるものであったが、この綿種は気候風土に合わず綿花は繁殖しなかった。
 我が国の気候風土に合う良質綿花の伝来は、応仁の乱終結の文明9年(1482)頃に中国から朝鮮半島を経て伝来した綿種の栽培であった。以後明応・永正年代(1492〜1520)にかけて三河以西の温暖な地方に、綿作・織布が広まり商品として流通していた事実が多くの文献に見られる。
 
(2)三河犬頭白糸絹(みかわのけんとうしろいとのきぬ)の話
 古代より三河地方は繊維産業が盛んであったことは、幾多の文献に見える。綿種が日本に伝来する以前の自生繊維時代の衣服は自給自足であったが、古代国家にあっては、民衆の労働や現物の負担の上に国家財政の基礎が作られた「大宝元年(701年)の律令体制」以後は稲作伝来と同時期に伝来したといい、植生繊維の苧麻(良質の麻)との生産技術が急速に進歩していった。
三河国は調(貢ぎ物)として羅・綾・絹白糸等を納めており、その絹は上質のものとして珍重された。天平勝宝2年(750年)の「正倉院文書」やその2年後の「雑物請用帳」によると、11ヵ国の貢絹があるがわざわざ「白絹布」と記してあり、精白な細糸で経糸・緯糸の密度の多い布で、他国の物より15%程は高く引き取られていた。9世紀の「延喜式」にも三河産の「犬頭白糸」は最上の絹として、絹最上糸国の中で納品量は他国の倍以上の貢であった。
 郡司はこのことを国司に伝え、国司は都に報告した。以後、犬頭白糸と呼ばれ蔵人所に納め、天皇の衣服を織るようになった。犬頭白糸が雪のように白く、光沢をおびた上絲であったことに由来する。

(3)絹糸・苧麻(チョマ)の製糸

●絹糸の製糸
絹糸はから採糸するが、養蚕は年に3回飼育されるのが普通で蚕卵が孵化して25日程桑の葉を食べて成長する。その間に4回の睡眠と脱皮して最後に体内の絹糸腺から絹の成分を空気中に吐糸する。その吐糸の全長は約1.200米余におよび、8の字形を描きながら2昼夜不眠不休で吐糸して「・まゆ」を作る。蚕は繭を作り終わると「蛹・さなぎ」となり、蛹は10日程で「蛾・が」になり繭に穴を開けるので、天日に干して蛹を殺すために乾燥する。
【製糸法】乾燥した繭を煮て(これは繭糸の蛋白質の一部が溶けて糸のほぐれがよく撚りやすくなる)ある一定の温度を保ちながら、作る糸の太さに応じて数10個の繭の糸先を箸で摘み出して、左手で繭糸を撚り合わせながら、右手で糸繰りを廻し巻き付けて生糸となる。蛾に穴を開けられた繭は「綿まゆ」と称して、煮揚げて手繰り寄せて真綿として防寒綿入れ衣として利用されていた。

●苧麻(ちょま)の製糸
苧麻は麻の一種で古くはカラムシとも呼ばれ、大麻の1年生と違い苧麻は多年生で刈り取っても、春には根株から多数の幹が群がり生えてくる。野生植物であったが弥生時代から植生栽培された。繊維は白くて細く丈夫であり夏の衣料として珍重された。砂地栽培は繊維が太く固くて衣料には向かない。
【製糸法】皮の柔らかい内に1本1本刈り取り・先端より枝葉をこき取り・一定の長さにきり揃え・ひと抱えほどの束にして・速やかに清水に浸す・幹を折り1本の幹から皮が2枚になるように剥ぐ・剥いだ皮を束ねて水に浸す・皮の繊維素外のかすを金ゴキでそぎ落として・水洗いして竿干で乾燥させ・細く裂いて先端部と根元部を結び籠ごと湯通しか染色して撚り合わせながら繰機に巻き取る。

実用草木染
染色には・以下の植物が多く使われ、混ぜ合わせて種々の色を作る。
【赤系統】ベニバナ(花)・アカネ(根)・スオウ(芯)・ヤマモモ(実)
【黄系統】クチナシ(実)・キハダ(樹皮)・カリヤス(幹、葉)
【茶系統】クヌギ(樹皮、実)・ザクロ(実皮)・ビンロージュ(実)
【紫系統】ショウブ(葉)・ムラサキ草(根)
【青系統】アイ(幹、葉)
【黒系統】ハゼノキ(葉)
【緑系統】ヨモギ(葉)
 浸透性をよくするため酢と木灰が使われていた。
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●楮【こうぞ】桑科の繊維植物で幹高(1〜3m)の喬木が多く、稀には灌木のこともある。自生するものもあるが、各地に栽植されており、高知、山口、島根、佐賀、熊本の諸県が主産地である。種類は眞楮(麻楮、赤楮、ともいう)高楮、綿楮の3種に大別できるが、これがまたそれぞれ数種に分れる。
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●穀【かじ】カジノキ(くわ科の落葉高木)の古名。樹皮は和紙の原料。
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●科【しな】しなのき(田麻)科の繊維植物である。温帯北部の山地に自生する落葉喬木で幹高20mを越える。本州、四国、九州、北海道等に自生し、とくに北海道に多い。樹皮は強靭な繊維からなっているので、これから化学精練又は醗酵精練によって繊維を採りこれを原料として製織し科布(又はまだぬの)をつくり酒、醤油の漉袋その他穀物用の袋とする。蚊帳、縄、船舶用ロープ、馬具の一部、腰蓑、春籠、箕畳の経糸及び縁布に利用される。
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●山藤【やまふじ】まめ科の繊維植物である。山地に自生する多年生草本で、本州各部及び四国に産し、蔓は強靭でものを縛ったり、籠等を編むのに用いる。また機械製繊及び醗酵精練もしくは化学精練によって靭皮繊維を採り布を織る。
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●大麻【たいま】桑科に属する一年生草本で、わが国で一般に麻といえば大麻をいう。ソ連、イタリー、北米、欧州、トルコ、チリー、インド、中国等が主な産地である。わが国では栃木(赤木系、白木系、青木系等がある)広島、長野の各県が多い。大麻繊維は1〜2m位の長さで3mに及ぶものもある。強力は綿花、亞麻に優るが伸度は劣り、折れ易く吸湿性がある。耐水性があり腐敗し難い。靭皮繊維は網索、漁網、畳糸、鼻緒芯、釣糸、絞染の絞糸、弓弦、蚊帳等に用いられる。
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●葛【くず】まめ科の繊維植物である。わが国各地、特に鳥取県に多く産し、沖縄、台湾、朝鮮にも育生する。繊維は淡黄色又は灰色でその單繊維は長さ0.95〜4.2cm、巾1.01〜0.02mmで外層はリグニン化している。この繊維を針先で適当の太さに裂いて紡績して糸を得る。この糸を緯糸に用い、経糸に綿叉は亞麻糸を用いて織るのが葛布である。
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●イラ草【いらくさ】俗にイラ草と呼ぶものと、みやまいらくさと呼ぶものとある。両者ともイラ草科に属する。イラ草は、わが国至るところの山野に自生する多年草草本で、皮部から採取する繊維は織物、網索等の原料に用いる。みやまいらくさは東北では山麓、関東以南では高冷地に産する。葉茎共刺があり触れると痛を感ずる。
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●苧麻【ちょま】イラ草科に属する多年生草本で、到る処の山野に自生するが栽培もされている。苧麻繊維は、強靭で光沢、色相共に美しく、冷感を覚えるので、夏季衣料用として常用され、着尺地、洋服地、シャツ地、ハンカチーフ、タオル、ホース、調帯、カンバス、電気絶縁布、タイヤ芯、紐類、釣糸、縫糸、漁網、綱等広汎な用途に供される。
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●桑【くわ】桑科の繊維植物である。本州、四国、九州、沖縄、及び台湾によく育生する。主として網索、テックス、紙原料等として使用されるが戦時中は落綿等の屑繊維と混紡して雑繊維糸の紡出又は家庭綿と称する代用衛生綿の製造に用いられた。
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●蓮【はす】スイレン科の多年生水草。古く中国から渡来し、池や水田で広く栽培される。根茎は泥中をはい、秋には末端が肥厚する。葉は円形で長い葉柄につき、径50cm。夏、水上につき出た花茎の頂に径20cmの紅色ないし白色の花をつける。
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●経糸【たていと】織物を構成する糸で、緯糸に対する他の一組の糸。織物の縦方向に並んだ糸で、原則として組織に従い緯糸の上又は下となって直角に組み合わされている。
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●緯糸【よこいと】織物を構成する糸で、経糸に対する他の1組の糸。織物の横即ち耳と直角の方向に並んだ糸で、原則として経糸と直角に、組織に従ってその上又は下となって組み合わされている。
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●養蚕【ようかい】繭をとるために蚕を飼い育てること。
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●綿 【わた】綿は綿葵科ゴビシウム属の植物である。主として亜熱帯に栽培される。品種は長い栽培の歴史を通じて原種の間で互に交雑しているので、学者によって分類に大差がある。普通は約42種とされ、このうち農作物として重要なものは十数種である。
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●木綿【もめん】綿の種子からとった繊維のこと。衣料用として広く用いられている。
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●崑崙人【こんろんじん】中国西部の山岳少数民族で799年に日本に漂着し、木綿を日本に伝えたとされています。
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●綿花【めんか】ワタの種子を包む繊維。紡いで綿糸とする。
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●自生繊維時代【じせいせんいじだい】--------
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●貢ぎもの【みつぎもの】人民がおさめる穀物以外の物品の租税のこと。
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●絹白糸【きぬしらいと】絹(蚕の繭からとった繊維)で作った白い糸。
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●絹【きぬ】普通生糸を原料とした絹糸、絹組物、絹編物、絹織物を総称していう。広義では生糸及び柞蚕糸、並びに野蚕糸、絹紡糸を原料とした絹製品を含めていう。
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●白絹【しろぎぬ】自生地の絹織物を総称していう。
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●犬頭白糸【けんとうしらいと】三河の国の郡司の妻の飼犬が蚕を食べたところ、犬は頭から白く輝く糸を吹き出して死んでしまった。またその犬を埋葬した付近の桑の木にも蚕が鈴なりに繭を作り、上質の生糸が取れるようになった。この話が都に伝えられ、三河の国は天皇の衣服を献上するようになったという今昔物語に伝えられる伝説の糸。
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●郡司【ぐんじ】律令制の下で,郡の政務にあたった『地方官』のこと。701年の大宝律令の成立とともにはじまった。
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●国司【こくし】中央から国へ派遣され郡司(ぐんじ)を指揮して政務をおこなった『地方官』のこと。中央の貴族が,一定の任期で派遣されていた。
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●上絲【じょういと】上質の生糸。
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●蚕【かいこ】動物分類学上節肢動物昆虫網鱗翅かいこのが科かいこのが属に属するかいこのがの幼虫をいい、かいこのがは、卵、幼虫、蛹、成虫の4段階を経て、1世代を完全に変態する昆虫である。蚕は家蚕及び野蚕をを総称する語であるが、一般に家蚕だけをいう。蚕が化蛹する前に吐糸してつくったものが繭この繭を煮て解舒して生糸をつくる。
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●繭【まゆ】蚕兒が老熟すると、その体内にある絹糸腺から分泌する繭糸をその頭部の吐糸孔からの層を繭層といい、繭兒を含む全部を繭と呼ぶ。
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●生糸【きいと】家蚕の繭糸を抱合させ編機用の原糸として使用できる1條の糸條としたもので繰糸したままで何らの撚りを加えず、また精練もしないものをいう。
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●綿まゆ【わたまゆ】蚕がさなぎから蛾となり繭に穴をあけたものを称していう。
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●真綿【まわた】くず繭を引き伸して作った綿のこと。
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●操機【くりはた】糸を巻き取る道具。
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●実用草木染【じつようくさきぞめ】植物の根・皮・葉・実などからとった色素を用いて染めること。
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